私はFTX(エックスジェンダー)で、2022年10月13日に乳腺摘出手術を受けました。ホルモン注射をしていなかったので、2018年から制度変更により、胸オペを保険適用で受けることができました。
私と同様に、ホルモン注射を受けておらず、保険適用で胸オペを受けたいという方で、特に行徳総合病院での手術を考えている方の参考になるように、手術を受けるまでの必要な手続きとだいたいの費用目安などを時系列にまとめて記録しておきます。
保険適用で手術を受けるために、GID学会認定医の診断書をもらう
クリニックはいくつかありますが、私はお茶の水にある「はりまメンタルクリニック」に通い、セカンドとして「ちあきクリニック」を紹介してもらいました。(2人の認定医からの診断が必要となります)
性別違和に悩んできた過去がありましたが、メンタルクリニックにお世話になったことはなく、保険適用の手術のための診断書を得ることが目的だったため、まず正直にそのことを伝えました。数回のカウンセリング(自分史を書いて、カウンセラーに生い立ちを話す)を終えた後、セカンドのクリニックに紹介状を書いていただき、セカンドでも(たしか)2回程度通った後に、GID学会にて認定を得て、無事に診断書をいただくことができました。
ただし、今はとても需要が多く、クリニックの予約を取るのがなかなか大変でした。次の予約が1ヶ月以上空いてしまうこともあり、初めてクリニックに通い始めてから診断書を受け取るまでに、最短でも数ヶ月の時間を要することは覚悟した方が良さそうです。
カウンセリング 1回 1、2千円程度
GID診断書 5千円程度
手術を受ける病院に紹介状を持っていく
保険適用を受けられる病院は限られていますので、事前に自分が住む場所から行きやすい病院を調べておく必要があります。私が胸オペを考え始めた頃、インターネットで調べた限りでは、東京から一番近い場所で「山梨大学医学部附属病院」でした。しかし、最近「行徳総合病院」でも胸オペが受けられるようになったという話を、はりま先生から聞いて、行徳は自宅から電車で通いやすい場所だったので、とてもありがたいと思いました。
はりま先生は「よし、じゃあ行徳コースで!(行徳総合病院の)櫻井先生は器用だって○○先生も言ってたからね」という感じで、行徳総合病院への紹介状を書いてくれました。
病院の形成外科に電話し、「胸オペの手術をお願いしたい」と伝え、外来の予約を取りました。
1回目は紹介状を持って行き、手術のリスクや説明などを受け、親族の同意書の様式をもらって帰りました。
※この時はまだ診断書が手元になかったので、再度診断書を持参して手術日程を決めることに。
この日に病院から説明を受けたのは、以下の内容になります。
<手術・治療に関する説明と同意書の内容>
診断名:性同一性障害(FTX)
予定術式:両側乳房切除
目的:①上記疾患にて乳房切除をすることにより、症状の改善が見込めること
②患者さん自身の強い希望があるため行います。
麻酔方法:全身麻酔
入院期間:1週間程度の入院
費用:保険診療費(3割負担)および個室代等
自費診療の場合 乳房切除のみ:65万円、子宮卵巣摘出術と同時:145万円
(乳腺の病理検査を行う場合は+2万円かかります。合併症が生じた場合は追加費用が発生します)
【手術の内容】
①乳輪下半周を皮膚切開します。
②乳腺を周囲組織から剥離し、摘出します。
③止血を確認し、ドレーンを留置して閉創します。
【注意点】
・傷跡は必ず残ります。
・程度は様々ですが乳頭部・胸部の感覚低下が生じます。
・1ヶ月間はバストバンド(胸帯)着用し、スポーツ禁止。
・余剰皮膚が多い場合などは後日修正術が必要になることがあります。
【生じうる合併症】
・術後血腫(皮下に血が溜まる)→ 再手術(約5%)
・電気メスによる皮膚損傷、乳頭壊死等
感染、疼通、創し開、皮膚壊死、皮膚潰瘍、ケロイド・肥厚性瘢痕、縫合糸の露出、感覚障害、運動障害、色素沈着、深部静脈血栓、アレルギーなど。
その他予期せぬ重篤な合併症(生命に関わる合併症を発症する可能性も0ではありません)が生じる可能性がありますが、最善の対処をします。
【他の治療との比較・治療しなかった場合】
現状のままです。
【記録写真の撮影および使用について】
術前・術中・術後に記録写真を撮影することがあります。プライバシーに十分配慮し撮影・保存します。経過を画像として記録しておくことが目的ですが、他に医学・診療向上の目的のために論文として専門の学術誌に投稿する場合や、学会等で発表に使用する場合があります。また、その他n検査データも使用することがありますが、プライバシーに十分配慮いたします。
【セカンドオピニオンについて】
セカンドオピニオンをご希望の方はお知らせください。
意味・必要性
予測される合併症・危険性
期待される効果と限界
実施しない場合に予測される病状の推移
他の治療法
について十分な説明を受け理解しましたので、上記について行われること及び、
実施中に緊急の処置を行う必要性が生じた場合には、適宜処置が行われることについて、
同意します ・ 同意しません
同意日:
患者様自署:
患者家族自署:
(患者様との関係: )
※病院、患者控の2部に署名
※上記は、2021年11月1日現在の行徳総合病院の場合の参考例です。
※内容は術式等によって異なりますのでご留意ください。
※この日に、同病院の産婦人科にて、外性器並びに内性器の診察を受けましたので、一応心づもりがあると良いかと思います。
私の場合、同居しているパートナーは法律的な家族関係ではなかったため、実家の母親に連絡し、書類を郵送して、署名したものを送り返してもらいました。(自治体のパートナーシップ証明書でも可能かもしれないので、該当する方はぜひ先生に聞いてみてください)
名前を変えることもそうでしたが、親からもらった身体にメスを入れることには、少なからず親への申し訳なさや、どういう気持ちになるんだろうという心配も少しありましたが、私の場合はカミングアウトしてから何年か経過していたこともあり、手術のリスクの心配はされましたが、割とすんなり同意してくれました。
人によっては、この同意書が結構ハードルになる方も少なくないかもしれません。
余談ですが、私の場合は、「海外の俳優のアンジェリーナ・ジョリーさんも乳癌のリスク回避のために両乳房切除手術を受けたよ」なんて言って、少しでも家族の心配を減らそうと説得しました。
病院に同意書と診断書を持参し、手術の日程を決める
家族の同意書を手に入れたら、持参して再度、病院に足を運びます。
(手術日を決める前に、書類の郵送や電話でスケジュールの相談ができないのが地味に大変ではありました)
そして、ここでも需要の高さを感じますが、手術の予約も大行列で、最短でも半年以上先の予約でした。(現在はもっと待ち期間長いと思われます)
GID診断書をもらったのが2022年1月頃で、夏前に予約することも可能でしたが、そこまで急いでいなかったことと、夏は旅行にも行きたかったので、季節的にも涼しくなる秋頃がいいかなと思い、私はその場で2023年10月13日に手術を予約しました。前日から入院となるので、10月12日に入院して、10月19日退院のスケジュールです。
※GID学会の診断(認定)を待ってからの手術日予約となりますので、ここに至るまでは診断と同時並行で進めていました。何度も病院に足を運ぶことのないよう、この流れをふまえて、計画的に段取りすると良いと思います。
手術の1ヶ月前に検査を受ける
手術日から逆算して約1ヶ月前くらいを目安に、術前検査の予約を取ります。検査予約は電話で可能でした。
検査費 1万円程度
手術のための入院(1週間)
<事前に用意しておくと良いもの>
・胸サポーター(リブバンド)
・前開きの上着(ユニクロおすすめ)
・脱着しやすいかかと付の履き物(転倒防止のためかかとありを指定されます)
・パジャマ、タオル(病院で有料のパックも申し込めます。荷物が少なくなるのでおすすめ)
・下着
・ティッシュ
・歯ブラシ、歯磨き粉
・コップ
・水など(病室の階にも自販機はありますが、術後は動きづらいので事前に買っておきましょう)
・映画を観たい人はパソコンなど
・ベットに荷物をかけたい人は、S字フックもあると便利
・冷えピタ(術後にもし熱が出た場合あると良いかも)
2022年10月12日の昼頃に病院到着。昼食は出ないので、済ませてから来院。コロナウイルスの検査を受けて、病室に案内されました。8階の813病室、広々とした個室で快適です。夕食は病院食が出ました。
食事制限として渡されたのがこちら↓
手術を受けられる方へ
<食事・水分の制限>
食事は12日夕食以降は何も食べないでください。
水分(水・茶のみ):13日24時以降は何も飲まないでください。
12日。いよいよ手術ということで、やっぱり少し緊張もありましたが、経験豊富な看護師さんたちが色々ケアしてくれたり、まめにコミュニケーションをとって必要な案内をしてくれていたので、終始安心できました。
手術当日は、お手洗いを済ませ、看護師さんと一緒に手術室まで歩いて行き、全身麻酔で眠りについたと思って、目覚めたらもう病室のベットの上でした。手術時間はだいたい4時間程度でしたので、昼ごろから始めて夕方には終わりました。
術後は、身体を自由に動かせず、鈍痛もあり、少ししんどい感じではありましたが、痛みも薬で上手にコントロールされていたので、我慢できないような強い痛みではありませんでした。(痛いと感じた時は手元のボタンをぽちっと押すと点滴内にガスが注入され痛みが抑制されるような器具もありました)
足には、着圧エアマッサージャーのような物が取り付けられていて、同じ体勢で寝ていても、血の巡りが滞らないようにケアしてくれていました。
ただ、家族やパートナーに無事手術が終わったことを連絡したかったのですが、当日は、寝ながら体勢を崩さずにスマートフォンを操作するのも、いっぱいいっぱいでした。看護師さんに手伝ってもらって物をとってもらったり、空調を調節してもらったりしました。
(自由診療だと日帰りで胸オペもするところもありますが、自分には当日歩いて帰るのは考えられなかったです 笑)
手術の翌朝から病院食が出されましたが、「食欲ないと思うので、全部食べなくていいですよ」と言ってもらえて、たしかにそんなに食欲がなかったので、ヨーグルトを食べて朝食は終わりました。
この日は寝たきりで、なるべく動かないように安静にしていました。
翌日もまだ痛みはあり、体調にリンクして、1人でいて精神的にも少し滅入るような気分の時もありました。この時は、映画も音楽も聴くような気分になれず、じっと時間が過ぎるのを待っていました。普段の健康的な状態が、いかにありがたいかを実感する機会となりました。とは言っても、痛み止めも飲んでいたので、そこまで強い痛みがあったわけでもなく、3日目、4日目と日が経つにつれて、時間の経過とともにどんどん身体が楽になっていきました。
体調が良くなってくると、病院のご飯が美味しく感じて楽しみになり、映画を観たり、音楽を聴いて良い気分になっていきました。私は、コーヒー豆を持ち込んでコーヒーを淹れたりもしていたのですが、看護師さんに聞いたら、術後にコーヒーはあまり良くないそうです。少しなら良いとのことでした。
私の仕事は、リモートワークが可能なので、後半は病室で仕事をしていました。
傷口を濡らさなければ、シャワーも浴びても大丈夫でしたので、仕事の休憩時間に、自分で頭や体を洗ったりしていましたが、看護師さんから「自分でやると傷に触るので、なるべく頼ってくださいね」とちょっと叱るような口調で言われました。こちらの休憩時間に合わせてもらうのは申し訳なかったので、自分で洗ってしまいましたが、少し反省しましたので、皆さんはぜひ頼ってくださいね。
術後は、ドレーンという血液・リンパ液等を排出するための医療器具を両脇の下あたりに取り付けるのですが、この液の量を見て、ドレーンを外すタイミングをみます。毎晩0時に看護師さんがドレーンに溜まった液を取り出してくれて、量を記録してくれていました。
トイレに行く時にもドレーンがあると邪魔くさいので、早く取りたい気持ちになるのですが、術後安静にしていないと、液はどんどん出てしまうので、注意が必要です。私はたしか、退院の前日あたりに取り外したと思います。
個室だから電話もできるし、音などにも気を使うこともなく、振り返るととても快適で満足した入院生活でした。
無事予定通り退院し、帰りはリュックを背負って1人でも帰れるくらいに回復していましたが、パートナーが行徳駅まで迎えに来てくれました。
以下が手術前にもらった案内です。ご参考までに。
<乳房切除後の経過及び注意点>
合併症において術後血腫(皮下に血が溜まる)には特に注意が必要です。
20人に1人くらいの割合で発症し、血腫を発症した場合は再手術が必要となります。
〜血腫のリスクを低下させるためには、術後の安静が重要です〜
※入院中の全期間
バストバンドがずれたり緩んだりした場合は、ナースコールして、看護婦さんに締め直してもらいましょう。
ベットから起き上がる時は、手を使わずに、ベッドのリモコンの頭の上がるボタンを押して、自動ベッドの力で起き上がるようにしましょう。
①手術当日〜翌朝
ベッド上で安静にしていてください。トイレもベッド上となります。
スマホや携帯電話をいじるのも、最小限にしましょう。
ヘッドアップは30度までです。
②術後1〜2日目
トイレまでの歩行や短距離の歩行は可能ですが、基本的にはベッドで安静にしていましょう。腕の力を使うような動作はしないようにしてください。
③術後3〜5日目
ドレーンの量が減ってきたところでドレーンを除去します。
ドレーンが抜けたらシャワー浴ができるようになります。
④術後6日目
順調に経過すれば抜糸して退院となります。
退院後の外来受診は1ヶ月後の予定です。
それまでの1ヶ月間はバストバンドを着用し、スポーツや重いものを持つなどの重労働は禁止です。
室料差額 88,000円
手術代一部負担金 82,303円
食事負担金. 7,820円
合計 178,123円(税込) (10/19支払)
※保険適用、高額療養費適用後の金額
※別途、保険用の診断書 5,500円がかかりました。
・チューリッヒ生命保険の入院・手術一時金 140,000円 (11/18入金)
※民間の保険に加入している方は、加入条件によってそちらの保険適用にもなるので、ぜひ確認してみてください。私は民間の保険にも加入していたので、数万円の自己負担で受けられました。
※高額療養費は、事前に認定証を取得して病院の窓口で出すことで、支払い時の医療費が自己負担限度額までとなる事前申請と、いったん全額支払った後に、受診後3ヶ月頃に自己負担限度額以上の分の払い戻しがある事後受給の2種類の受給方法があるので、確認してみてください。
乳頭縮小術について
乳頭縮小術は、希望者のみの任意選択ですが、後日手術が可能です。私は2023年3月に手術を受けました。
自然な見た目になるのと、Tシャツが1枚で着られるようになるので、個人的にはやってすごくよかったです。
乳頭縮小術は、保険適用にはなりませんので、ご留意ください。
術前検査費 1万円程度
手術費 90,000円(税込) ※自費
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